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◆高齢期の女性に関する健康支援

「食事・運動・つながり」3つのフレームでリテラシーを強化
高齢期のロコモ対策、「痩せ」と栄養不足には注意が必要

女性の平均寿命が約87歳(2018年)と年々のびている中、健康寿命の延伸は大きな課題となっています。
高齢期の女性の健康づくりについて、東京大学医学部附属病院 整形外科医師の山田恵子氏に聞きました。

東京大学 助教
東京大学医学部付属病院
整形外科 医師山田 恵子氏
更年期・高齢期の女性に多い健康課題にはどのようなものがあるでしょうか。

第一に挙げられるのは、女性ホルモンが減少することによる更年期障害と、その後の心身の不調です。

更年期以後、エストロゲンが不足することで骨粗鬆症、高脂血症、脳梗塞・心筋梗塞など血管の病気のリスクが増加します。さらに、アルツハイマー病、萎縮性膣炎、性交痛、皮膚など、体(粘膜)が乾燥しやすくなるといった症状も出やすくなります。

また、閉経前後10年くらいは女性ホルモンが一気に減少する影響で、イライラ、めまい、ほてり、のぼせ、頭痛、動悸、息切れ、汗をかきやすい、不眠、情緒不安定、食欲がないといった自律神経失調症状、肩こり、腰痛、関節痛といった痛み、しびれ、めまい、残尿感や頻尿なども起こりやすくなります。

こうした症状が、いくつもセットで起こるのが更年期なのです。

さらに高齢期には、骨粗鬆症、骨折、関節(いわゆる「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」)に注意する必要があります。これらは、要介護の原因となります。

高齢になるにつれて要介護の割合は増えますが(70代で1割、80代前半で3割、80代後半で6割。「高齢者人口と要介護認定率(年齢階級別、2009年)」厚生労働省)、そのうち運動器の障害が原因で要介護になるものが約4分の1。女性は特に、ロコモの主要な原因である骨粗鬆症、変形性ひざ関節症になりやすく、かつ平均寿命が長いため、ロコモを気にかける必要があります。

更年期・高齢期の女性が健康寿命延伸のために、意識すべきこと、生活習慣として気を付けたほうがいいことは、どのようなことでしょうか。

具体的に、次の5つのことを生活の中で意識するとよいでしょう。

  • 週3回程度の適度な運動習慣を続けましょう。「運動するぞ!」と大仰に構えなくても、生活の中で体を動かすことはできるので、できるだけこまめに動くようにしましょう。
  • 量は多くなくてもよいので、できるだけたくさんの種類の食品を食べることを意識しましょう。具体的には「さあ、にぎやか(に)いただく」(魚、油、肉、牛乳、野菜、海藻、いも、たまご、大豆、果物=10の食品群の頭文字をとったもの)を食事の中にまんべんなく取り入れるようにしましょう。
  • 高齢になると特にたんぱく質が不足しがちなので、意識して摂るようにしましょう。
  • 太過ぎ、痩せすぎの両方に注意が必要です。
  • 何か一つでも良いので、地域やコミュニティとつながるきっかけになるものを持ちましょう。
組織の健康づくり担当者が具体的な対策・施策を考える際には、どのようなことを意識するべきでしょうか。

「食事・運動・つながり」という3つのフレームワークを基に考えるとよいでしょう。

自分の組織では、その3つのうちの何に関するリテラシーが最も不足し、どこに強みがあるか考えてみてください。3つが相乗的に効果を及ぼすようになると、良いサイクルが生まれます。

食事はとにかくリテラシーが大切です。肥満予防が大事なのは皆さんよく知っていると思うのですが、高齢者の場合は「痩せ」と「栄養不足」も問題になります。「少量でもたくさんの種類を食べる」ことが大切です。また、噛む力が弱まっていないかということもチェックが必要です。

運動習慣については、実は壮年期の方が少なく、更年期から高齢期には運動する人が増えることが分かっています。運動習慣を持つ人が増えることは良い傾向ですが、きちんと介護予防につながる運動を推奨することが大切です。また、運動を通じたコミュニティは、つながりづくりにもなります。

更年期・高齢期の女性が必要としている健康づくり施策のアイデアがあればお聞かせください。

例えば、「運動の後に綺麗な格好をして人前で歩く(メイクアップしておしゃれをして、ファッションショーのようなものを開催する)」といったプラスのモチベーションがあると、コミュニティや運動効果の継続に役立つのではないかと思っており、これから研究を開始する予定です。

高齢期の健康づくりを、「介護」や「運動機能低下」を防ぐ、といったマイナスをゼロにするイメージの施策だけではなく、健康づくりをすることで、何か良いことが起きる、という前向きな具体例を頭に浮かべられるようなアイデア、つまりプラスのモチベーションをどのようにつくって継続するか、という発想の転換が施策に必要とされているのではないかと思います。

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