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◆働き手が求める職場・地域における健康支援

人材の流動化とともに変わるフリーランスと地域・企業の関係
中長期的な視点でセーフティネット構築を

副業と兼業の拡大やフリーランスとして働きやすい環境づくりといった時代の流れを受け、現在、フリーランスの人口は300万人以上といわれます。今後ますます増えると考えられているフリーランスの健康づくりについて、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 代表理事の平田麻莉氏に聞きました。

一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 代表理事
平田 麻莉氏
フリーランス・在宅ワーカーの健康づくりが重要なのはなぜでしょうか。

女性に限ったことではありませんが、フリーランスは文字通り、身体が資本です。

会社員であれば、雇用契約(就業規則)の中に休暇や休業の制度があり、一定程度は休んでも給料がもらえますが、フリーランスは業務委託契約で、納品や稼働、成果に対して報酬をもらうワークスタイルです。業務を遂行できなければ、すなわち報酬を失うことに直結します。

また、フリーランスに仕事を依頼する企業は、社内には存在しない価値やリソースを求めています。つまり、替えの効かない存在として依頼されていることが多いので、プロジェクトの期間や締切に支障を来すと取引先に大きな迷惑がかかり、信頼も失いかねません。もちろん、怪我や突発的な病気など、やむを得ない状況もありますし、代理で業務遂行できる人を推薦するなどの配慮で事なきを得るケースはあるものの、基本的には、健康を維持するための自己管理はフリーランスの責任だといえるでしょう。

フリーランスの立場で、健康維持・増進をしていくときに、どのような困りごと・悩みに直面することが多いでしょうか。

フリーランスの多くは個人事業主だと思います。個人事業主は、お住まいの都道府県の国民健康保険に加入しています(国保組合が存在するごく一部の職種の方を除く)。会社員が加入する健康保険組合では、病気やケガで休業した人に「傷病手当金」が支給されます。しかし、国民健康保険の法律では、傷病手当金の給付は任意のため、実際に給付している自治体はありません(*)。逆に、もし傷病手当金を個人事業主にも給付する自治体が出てくれば、フリーランスの移住が進むでしょう。

また、“法人成り(法人登記)”しているフリーランスであっても、労災保険の対象外である点は、個人事業主と同じです。つまり、病気休暇もなければ、休業中の所得保障もないというのが、フリーランスの現状です。

*令和2年3月10日に新型コロナウイルス感染症対策本部が発表した「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策―第2弾―」において、「国民健康保険及び後期高齢者医療において、新型コロナウイルス感染症に感染するなどした被用者に傷病手当金を支給する市町村等に対し、支給額全額について国が特例的な財政支援を行う」との記載が盛り込まれた。それに伴い、厚生労働省保険局国民健康保険課および高齢者医療課から、市町村(特別区を含む)と後期高齢者医療広域連合に対し、新型コロナウイルス感染症に感染した国民健康保険組合の被用者(発熱等の症状があり感染が疑われる者も含む)に対する傷病手当金の支給について検討するように事務連絡が出された。

さまざまなフリーランスと適用される健康保険など

さらにいえば、会社員であれば毎年、人事部から健康診断の案内が来て、会社によっては受診したかどうかの追跡がなされたり、人間ドッグを受けられることもあります。フリーランスには自治体から届く特定健診やがん検診など案内はあるものの、健康管理は自己責任が基本であるため、毎年、自分の誕生日の前後に人間ドッグを受ける、というような習慣を作ってみるのも一つのアイデアだと思います。

組織の健康づくり担当者がフリーランスを対象とした健康づくり施策を考える際にはどのようなことを意識するべきでしょうか。

内閣府統計によると、現在、日本には340万人あまりのフリーランスがいるとされています。自律した働き方は政府も推進していますし、70歳までの就業機会確保で、雇用延長の代わりに従業員のフリーランス化を支援するという選択肢も現実的になってきました。

一昔前までは、フリーランスといえば、メディアや広告、エンターテインメントやITなど、一部の業界にいる未確認生物のような存在と思われていたかもしれません。しかし、今や、実にさまざまな分野・業界で、業務委託によるフリーランス人材活用は一般的になってきています。

フリーランスの職種の多様化

そうした意味で、業務委託契約による人材活用を積極的・定常的に行っている組織では、自社で働くフリーランスの健康への配慮も避けて通れなくなってくるのではないでしょうか。もちろんフリーランスは労働者ではなく、自律した働き方ですから、健康維持も自己管理が基本ではありますが、優秀な人材の獲得や定着、そして業務を滞りなく遂行するという意味でも、健康づくりを支援して損ということはありません。

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