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◆企業における健康支援の取組立案・推進

女性・男性と区別するのではなく一人ひとりを人財ととらえ
自社の価値観を重視した取組を

株式会社堀場製作所は、「おもしろおかしく」というユニークな社是を掲げる分析・計測機器の総合メーカーです。「健康経営銘柄※」(2019年・2020年)や「なでしこ銘柄※」(2019年・2020年)に選定されるなど、健康づくり&女性活躍の先進企業として知られます。同社では女性の健康づくり施策をどのように立案・推進しているのか、総務部副部長の冨嶋真二氏に聞きました。

※「健康経営銘柄」:経済産業省と東京証券取引所が共同で、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる上場企業を認定する制度。
※「なでしこ銘柄」:経済産業省と東京証券取引所が共同で、女性の活躍推進に優れた上場企業を認定する制度。

株式会社堀場製作所
総務部 副部長 冨嶋 真二氏
堀場製作所では、女性の健康づくりに関してどのような施策を実施しているのでしょうか。

当社では、「女性だから、男性だから」という性別での区別はなく、あくまで「ホリバリアン(=HORIBAグループで働く人の総称)」を対象として考えています。これは健康づくりに限ったことではなく、あらゆる施策に共通する考え方ですが、あえて「女性」と関連の深い施策を挙げるなら、「ステンドグラスプロジェクト」になるかと思います。

当社では、従業員をかけがえのない大切な財産と考え「人財」と表現しています。人財の多様性の価値やその意味を従業員全員が意識し、一人ひとりの能力を最大限に生かすため、ダイバーシティを推進しています。ステンドグラスは、色も形も大きさも異なるガラスが組み合わさって形作られており、1ピースでも欠けると成り立ちません。これを人と会社の関係になぞらえて、「ホリバリアン一人ひとりが、色も形も大きさも違うステンドグラスの一つひとつのピースであり、その集合体であるHORIBAが、美しいステンドグラスである」ということを意味しています。

2014年にスタートしたステンドグラスプロジェクトは、2013年のマネージャー登用研修を受講中の女性従業員の提案から始まりました。

このマネージャー登用研修は、課題発見力と課題解決力の両方が試されるもので、当時の当社は、管理職に占める女性の割合が3%と低く、女性の活躍の場を広げ、多様性を企業競争力につなげるためにはどうしたらよいかということが課題として挙げられました。

そこで、当時の代表取締役副社長 兼 経営戦略本部長をプロジェクトオーナーとした国内グループ会社縦断プロジェクトを立ち上げ、各階層に向けて意識改革のためのワークショップやプロジェクトメンバーからの積極的な発信・提案活動がスタートしました。また、経営会議やグローバルミーティングなど、さまざまな意思決定の場面に女性の参画を進めるなど、女性リーダー育成にも注力し、女性管理職も年々増加しています。2017年にはダイバーシティ推進専任組織「ステンドグラスプロジェクト推進室」が発足し、現在は、全社および各部門の意思決定のプロセスに参画する女性の割合を20%以上にするといった目標を掲げて活動を推進しています。

ステンドグラスプロジェクトの推進体制

また、プロジェクト発足前から女性の健康づくりの具体的な施策として、「フェミニンサポート制度」を導入しています。この制度の下、提携する産婦人科クリニックからドクターを招き、年1~2回、不妊・生理痛・更年期等の女性の身体をテーマとするセミナーを開催しています。また、この産婦人科クリニックでは、メール相談や土日・時間外の診察も可能で、男性社員には家族の相談も可能とするなど、多くの従業員とその家族に、使いやすい制度にしています。

「女性向け・男性向け」というような区別をしていないということですが、健康づくりの施策を立案・検討する際に、どんなことに気を付けていますか?

従業員を一人ひとりの人財として見ることが重要で、「女性」とひとくくりにすることには違和感があります。

ただし、今の日本社会において女性は男性よりもプライベートやライフステージの変化に関する影響を受けやすいことは念頭に置く必要があります。

創業者の故・堀場雅夫が「やじろべえの法則」と掲げていました。やじろべえは、左右に揺れながらバランスを保っており、左右どちらかが重くなりすぎると偏り倒れます。また、左右の重さが同じになって、揺れることがなくなっても倒れてしまいます。人は、片手に仕事を、他方の手にプライベートを持っています。人生においては、仕事に打ち込みたい時期もあれば、育児や介護等でプライベートに時間を費やさないといけない時期もある。考えや事情によって、やじろべえのように左右に揺れる一人ひとりを、倒れないように助けるのが、会社の役割です。

また、当社では、1980年代に「一部週休3日制」を導入しています。現在の「働き方改革」の考えに通じるもので、当社では自然なこととして受け止めています。

当社の全ての企業活動の根底にあるのが、社是「おもしろおかしく」です。人生80年のうち、20代から60代の約40年間、一日の中で太陽が出ている一番いい時間を過ごす場所である会社生活を、おもしろおかしく過ごし、充実した人生を過ごしてほしいという創業者の思いが、この社是には込められています。仕事でも、健康づくりの活動でも、社内で行われること全てが「おもしろおかしく」。

当社は、社是が浸透していることに加え、常に挑戦するチャレンジマインド、「見逃しの三振より空振りの三振」と言って、失敗してもチャレンジしたことを評価する加点主義の評価制度です。それが、「やってみたい、やってみよう」という背中を後押しする企業風土をつくっています。

健康づくりに関する施策のアイデアも、社内のいろいろなところから出てきます。私たち健康づくり施策に関わるスタッフの一つの役目は、その提案を受け止めつつ、「HORIBAらしく、『おもしろおかしく』やるにはどうするか」を考えること。独自性や自分たちの価値観を大事にしています。

多くの企業や団体が従業員の健康づくりに取り組まれていますが、「自分たちらしい施策かどうか」「自分たちの価値観に合っているかどうか」という視点は、活動する上でとても重要だと思います。

施策の効果検証・改善を行う際は、どんなことに気を付けていますか?

健康づくりにしてもダイバーシティにしても、KPIとして数値目標を設定しています。ただ、数値目標を持つことは重要ではあるものの、それを達成することが目的化しないように気を付けています。あくまでホリバリアンの一人ひとりが人財であり、自らの仕事にプライドとチャレンジ精神を持って主体的に取り組むことで、やりがいや働きがいを感じ、人生そのものの満足感を高めてもらうことを重視しています。

働き方改革を自分のこととするための「カエル会議」の展開や管理職への働きかけにより、「残業時間の減少」や「有給休暇の消化率UP」といった成果につながりましたが、その数値だけでは本質は見えてこないと思います。「やらされ感」がないかどうかヒアリングし、他の業務改革プロジェクトと連携することで、従業員自らが改革に取り組む企業文化を形成しています。

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