健康寿命をのばそう SMART LIFE PROJECT
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すき焼の名店が誇る多彩な技術が凝縮された
おいしくて楽しいヘルシー弁当

株式会社人形町今半 /株式会社人形町今半フーズプラント

スマートミール認証を取得した事業者の取組を紹介する「スマートミール探訪」。
今回は、「トマトすき焼と彩り野菜弁当」でスマートミール認証を取得した、人形町今半グループの株式会社人形町今半フーズプラント(本社/東京都江東区)です。
すき焼、しゃぶしゃぶを中心とした日本料理の伝統を守りつつ、健康志向に進化させた多彩な技術とは?

横田昌之さん(人形町今半 ケータリングサービス部参与)
人形町今半本店など、人形町今半各店の調理長を歴任する中で、お客さまのさまざまな要望に応えてきた横田昌之さん。現在は、その経験を生かし、新しい弁当の開発などにあたるほか、公益社団法人 日本料理研究会の師範として、技術の伝承や後進の育成に携わっています。
「トマトすき焼と彩り野菜弁当」でスマートミール認証を取得していますが、きっかけはなんでしょうか。
横田さん:当社の社長が、スマートミール認証を行っている「健康な食事・食環境」コンソーシアムの関係者から認証制度のことを伺い、その趣旨に賛同した社長から「やってみないか?」と言われたのがきっかけです。
生活者の食に対する健康ニーズが高まっていることも感じていたので、その時に「やります」と即答しました。ただ、そう言えたのは、2015年に日本内分泌学会と共同でヘルシー弁当を開発した経験があったからです。ヘルシー弁当を監修していただいた医師の先生からは、「『低塩・低カロリーはおいしくない』という固定観念がある。でも、楽しく食べられて、おいしいことが何より大事。そういうお弁当を作りましょう」と、お話をいただきました。
その時のお弁当は、「食塩2グラム以下」「カロリー400kcal以下」に加えて、「低糖質・良質脂質」「食物繊維・発酵食品で腸内環境改善」といった厳しい要件を満たす必要があったものの、最終的に、すき焼としゃぶしゃぶという2タイプのお弁当を開発しました。召し上がったお客さまからは、「このカロリーでこれだけバラエティに富んだ食材とすき焼きが食べられるのはうれしい」といった評価をいただき、この時に、低塩・低カロリーでもおいしく作るノウハウをたくさん学べたことは大きいですね。
家庭でもできる、おいしく減塩する工夫を教えてください。
横田さん:食塩はただ減らすのではなく、うま味と香味で置き換えるのがポイントです。お酢なら黒酢、みりんなら熟成の進んだもののほうがうま味が強く、香味はゆずや山椒といった和のハーブを上手に使うといいでしょう。
野菜は、火入れの温度がポイント。せいろや蒸し器を使って、野菜を蒸すとフレッシュな食感と甘みを楽しめ、栄養素や色も保つことができます。加熱しすぎると野菜ならではの食感が失われてしまうので、温度計がある場合は90℃くらいで蒸していくとよいでしょう。そうすると、一つひとつの野菜の味わいが立ってくるので、味つけを控えめにすることもできます。
また、オイルを活用するのも工夫の一つ。例えば、しょうゆ系のたれの代わりに、オリーブオイルやごま油、ピスタチオ油などを使ってみるのもおすすめです。今回のお弁当では、胡麻豆腐にピスタチオ油をかけるのですが、香りが強調されてデザート感覚で召し上がっていただけます。
「うま味と香りこそ、低塩のハードルをクリアする秘訣!」と言っても過言ではありません(笑)。ぜひお試しください。
トマトすき焼と彩り野菜弁当
人形町今半独自の技術でやわらかく炊き上げた黒毛和牛のもも肉と、黒酢たれの相性が抜群。「レストランで、卵アレルギーのお客さまや、松茸のすき焼をお出しするときに提供している葛餡をアレンジしました。すき焼の新しいスタイルとしてお楽しみください」と横田さん。2020年7月から販売をスタートし、「比較的高齢で、食塩を気にされるお客さまを中心に注文数はだんだんと増えてきています」と言います。
「トマトすき焼と彩り野菜弁当」には、低塩・低カロリーでおいしく作るノウハウがたくさん詰め込まれているんですね?
横田さん:そうですね。脂肪分が少ない黒毛和牛のもも肉のすき焼を、特製の黒酢風味たれで召し上がっていただくのですが、定番の生卵とは違う独特のコクを楽しんでいただけると思います。黒酢たれはトマトとの相性も抜群で、「これで食塩控えめなの?」と驚かれることも多いです。
お魚にはオメガ3脂肪酸が比較的多く含まれる青魚のサワラとイワシを使って、サワラは焼き物、イワシはつみれにして、食感の違いを楽しめるようにしました。
あと、このお弁当は、近年注目されている「エネルギー産生栄養素バランス」(たんぱく質・脂質・炭水化物のエネルギー比率)を意識したメニュー構成になっています。管理栄養士と相談しながら食材を選んでいったのですが、認証基準の範囲内で最高のおいしさを追求しながら、動物性と植物性、海の幸と山の幸をバランスよく取り入れることを目指しました。
お客さまからは、「今まで食べたヘルシー弁当の中で一番おいしかった」など、うれしい反響をいただいています。このお弁当だけで健康になったり生活習慣病を予防できたりするわけではありませんが、栄養バランスの大切さに気付いていただくきっかけになればうれしいですね。
食のプロとして、生活者の健康意識の高まりをどのように感じていますか?
横田さん:料理人になって40年以上経ちますが、最近は、多くのお客さまが塩分と脂(脂質)を気にされます。レストランでも、お弁当のお問い合わせでも、「脂っこくなくて、塩分控えめなメニューはどれですか?」とご質問されるケースが増えています。
また、“食を通じた健康づくり”という観点とは違うかもしれませんが、食物アレルギーのある方は非常に多く、ベジタリアンやビーガンの方も年々増えています。
当社では、あらゆるお客さまにお食事を楽しんでいただくために、アレルギー対応はもちろん、食材に対するリクエストやメニューにない料理のご注文などもお受けしています。そうした経験の中で、食に対するニーズは多様になっていると感じます。
スマートミールや食を通じた健康づくりの取組みを、今後どのように進めていきたいでしょうか?
横田さん:スマートミールについては、お弁当のバリエーションを増やしていきたいですね。現在販売している「トマトすき焼と彩り野菜弁当」はどちらかと言えば春夏向きなので、まずは、秋冬版を開発するのが目標。その先には、四季に応じた4種類、できれば2か月に一度献立を変える6種類まで増やして、季節ごとの味わいを提供していきたいと思っています。
スマートミール弁当以外の健康志向の商品として、当社従来品より塩分を25%減らしたすき焼割り下を販売しているほか、この割り下を使ったお弁当を惣菜店で敬老の日に販売しています。お客さまからは「減塩というイメージから味が薄くなったものを想像していたが、ちゃんとおいしい」「腎臓の悪い家族のために、はかりを使いながら割り下を自作していたので便利で使いやすい」といった感想をいただいています。 また、飲食店でも、メニュー紹介の中で「ビタミンDが豊富な脂の乗った戻り鰹や免疫力を高めるアスタキサンチンを持つ秋鮭」というような形で、食材にまつわる健康情報をさりげなくお伝えする取組も行っています。
今後も、食に携わる企業として、味にも健康にもこだわり続けることが大切だと思っています。お客さまの健康づくりに貢献しながら、スマートミールをはじめとした“健康にいい食事”に対する認知も広めていきたいですね。