健康寿命をのばそう SMART LIFE PROJECT

皆さま向け 一人ひとりの健康づくりのために睡眠に関する知識を紹介します

専門家に聞きました
今日から使える睡眠トリビア

布団に入ったらすぐに寝つけて、朝までぐっすり眠れて、スッキリ目覚める。そんな睡眠が理想ではありますが、現実はなかなか難しいもの…。どうすれば快眠生活が手に入るのか、正しい情報はあまり知られていません。 そこで、睡眠・覚醒障害研究の専門家である国立精神・神経医療研究センターの栗山健一先生に、睡眠に関するトリビアについて伺いました。良い睡眠が得られると、疲れが取れるだけでなく、もっと大きなメリットがあるようです。自分の睡眠について、一度見直してみませんか?

監修栗山健一

国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所睡眠・覚醒障害研究部部長、同センター病院睡眠障害センター長兼任。

2019-2020年度厚生労働科学研究費“「健康づくりのための睡眠指針2014」のブラッシュアップ・アップデートを目指した「睡眠の質」の評価及び向上手法確立のための研究”、2021-2023年度厚生労働科学研究費“適切な睡眠・休養促進に寄与する「新・健康づくりのための睡眠指針」と連動した行動・習慣改善ツール開発及び環境整備”の研究開発代表者を務めている。

トリビア1:
日本人の睡眠時間の短さは大問題!

——日本人は諸外国と比較して睡眠時間が短いというのは本当ですか?

本当です。就労者の平均睡眠時間を比較すると、ヨーロッパ諸国が男女ともほとんど8時間を超えているのに対して、日本の場合は男性が7時間52分、女性が7時間33分。男性に比べて女性の睡眠時間が短いのも特徴で、男性と比べて家事や育児の負担が大きいことが背景にあると考えられます。

慢性的な寝不足は、生活習慣病のリスクにつながります。つまり、睡眠をしっかりとることで生活習慣病の予防にもなるのです。

——睡眠時間が短いことで、他にも弊害は起こっているのでしょうか。

代表的なのが経済的な損失です。寝不足の状態では注意力やパフォーマンスが低下し、事故やヒューマンエラーの危険性が上がります。ある研究では、4時間睡眠を数日続けると生産性が徹夜明けの日と同じくらいまで低下するという結果になりました。ただ、寝不足による生産性低下は本人が自覚しにくいため、忙しい職場ではいつの間にか作業効率が落ちているという状況に陥ります。また、先ほど述べたように睡眠不足によって健康を害し、働けなくなるリスクも高まります。

交通事故と睡眠時間の関係を調べた日本の研究では、睡眠時間が6時間未満の場合に追突事故や自損事故の頻度が高いことが示されています。

睡眠が足りないことによる損失を、ランド研究所という米国のシンクタンクが試算したところ、日本国内で最大年間1,380億ドル、約15兆円という金額になりました。睡眠時間を削って一生懸命働いているはずが、そのせいで逆に損失を生み出している状況になっていると言えます。

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トリビア2:
長く眠ればいいわけではない!?
睡眠の質の大切さ

——睡眠時間だけでなく、睡眠の質も健康と関係があるのでしょうか。

はい。睡眠の質が悪いことも生活習慣病にかかるリスクを高め、かつ症状を悪化させることにつながります。自分の睡眠の質が良いのか悪いのか、判断は難しいかもしれませんが、睡眠により十分休養が得られたかどうかといった主観的な感覚も役に立ちます。

寝室の環境(温度・湿度・照明・音・寝具)や寝るときの服装は、睡眠の質と関係しています。静かで暗く、季節に応じて快適と感じる温度・湿度が保たれていることが大切です。

就寝前の喫煙や飲酒も、睡眠の質を悪化させるので控えるようにしましょう。コーヒーや紅茶など、カフェインを含む飲み物を寝る前の3〜4時間以内に飲むのも、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったり、途中でトイレに起きたりすることにつながりますのでおすすめできません。意外に思うかもしれませんが、緑茶やウーロン茶、チョコレート、ココアなどにもカフェインが含まれていますので注意が必要です。

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トリビア3:
昼寝にもポイントがある?
午後のパフォーマンスを上げる
昼寝の方法

——睡眠時間が十分に確保できない場合、昼寝をしても良いのでしょうか。

基本は毎日夜の睡眠時間を十分確保することですが、現実的になかなか難しい人も少なくないでしょう。そういった場合には、午後の昼寝が眠気で仕事の効率が悪くなることを避けるのに役立ちます。

ただ、昼寝をする際には以下のポイントをおさえるようにしましょう。
・午後の早い時間に
┗夕方以降の昼寝は、夜の睡眠に影響します
・長さは15分程度
┗あまり長い時間昼寝すると、起きた後もボーっとしてしまって業務効率が上がりにくくなります

また、昼寝を短く済ませるコツも参考にしてみてください。
・横にならない
┗机に顔を伏せるか、椅子の背もたれにもたれかかる姿勢で寝るのがおすすめです
・昼寝の前にコーヒーなどのカフェインを飲む
┗目覚める頃にカフェインが働き始めるので、スッキリ目覚めやすくなります

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トリビア4:
眠りが浅いときには
「遅寝・早起き」がいい?

——眠りが浅く、夜中に何度も目が覚めてしまう場合は何が問題でしょうか。

そういったケースでは、布団の中で過ごす時間が長すぎる可能性が考えられます。必要な睡眠時間には個人差があり、それ以上の時間を布団の中でゴロゴロして過ごしていると徐々に眠りが浅くなってしまうのです。

仕事の第一線から退いた後など、時間に余裕が生まれるとつい長い時間床の上で過ごしがちになります。また、不眠を自覚し、それを補おうとして長い時間寝床で過ごすことも、さらに眠りが浅くなり、睡眠中に目が覚めることにつながり、あまり効果的ではありません。

眠りが浅い自覚がある場合は積極的に遅寝・早起きを心掛けると、結果として深く、必要なだけ眠れることにつながります。

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トリビア5:
若者の寝不足の原因はスマホ?

——若い世代の睡眠に、スマートフォンが大きな影響を与えていることについて教えてください。

厚生労働省が2019年に行った「国民健康・栄養調査」の中で、「あなたの睡眠の確保の妨げとなっていることは何ですか」という質問に対して、20~29歳では男女とも「就寝前に携帯電話、メール、ゲームなどに熱中すること」を選択した割合が最も多く、男性では43.2%、女性では42.7%でした。

若い世代に限らず、寝る前についスマホを触ってしまうという人は少なくないでしょう。ただ、寝る前に強い光を目に入れたり、脳が興奮する情報に接したりすることは、睡眠の質を下げてしまいます。スマホだけでなく、ゲームやテレビも同様です。

——よく眠るために、寝る前にはスマホやテレビは見ないようにしたほうが良いですね。

そう単純な問題ではありません。寝る前に動画を見たり友達と連絡を取り合ったりすることがストレス解消になっている場合もあるからです。ストレスを溜めておくことは質の悪い睡眠の原因になります。

寝る前のスマホやテレビがやめられず、それによって寝不足や眠りの質の悪さを自覚している場合は、ストレスがたまっているサインかもしれないと捉え、できれば、日中にできる別のストレス解消法を探してみるのがおすすめです。

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トリビア6:
睡眠中に呼吸が止まる…
睡眠時無呼吸症候群は自分で気付ける?

——睡眠時無呼吸症候群は、なかなか自覚できないと聞きますが、自分で気付く方法はないのでしょうか。

睡眠中に呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群は、いびきを家族などに指摘されることで発覚し、治療につながることが多い病気です。そのままにしていると、高血圧、糖尿病、不整脈などさまざまな病気が発症するリスクを高めるので、適切な治療を受けてほしいのですが、いびきや呼吸の停止を本人が自覚しづらいというやっかいな点があります。

ただ、自分で気付く方法がないわけではありません。睡眠時無呼吸症候群だと一定の睡眠時間を確保できていても、日中に耐え難い眠気に襲われたり、突然居眠りすることがあります。ちゃんと寝ていても日中ものすごく眠くなるという場合は、一度医師に相談してみましょう。また、睡眠中のいびきを録音するアプリも複数あるので、そういったもので一度測定してみるのもよいでしょう。

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まとめ

睡眠に関する正しい知識を身につけ、定期的に自らの睡眠を見直し、適切な睡眠時間の確保、睡眠の質の改善、睡眠障害への早期からの対応によって、からだとこころの健康づくりをめざしましょう。

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