スマート・ライフ・プロジェクト

Q1

「睡眠は大切!」と感じた経験を教えてください。

選手だった頃は、「ちゃんと眠れなかった」ということがメンタル的に良くないですし、疲れもとれないので、睡眠時間はしっかりととるようにしていました。毎日、朝練習があるので、起床は5時半とか6時。逆算して、夜12時までに寝るようにしていました。自分自身で「大丈夫!」と納得できる睡眠時間を確保できないと、「最高のパフォーマンスが出せないんじゃないか…」と、不安になって、それが結果にも出てしまうものです。
栄養も大事なので、食べるものに気を付けるのはもちろん、寝る時間の4時間前までには食事を終えるようにしていました。

マラソン大会で一般ランナーを激励する有森さん。

Q2

心地よい眠りのために工夫していることを教えてください。

寝室には、電子機器を置かないことと、寝る2時間くらい前からはスマートフォンをできるだけ触らないようにしています。以前は、寝る寸前までスマートフォンを見ていたのですが、リラックスして寝るためにはちょっと控えたほうがいいかな、と。
寝る前には黙想して、一日を振り返りながら、心を落ち着かせるようにしています。「今日はちょっとイライラしているな」とか、自分の心の状態と向き合うことにもなりますし、心を整えてから眠るのは、私にとって良い習慣になっている気がします。現役時代は、一日の最後に「練習日誌」を書くことが、そういう時間になっていましたね。
あと、シリアスすぎるストーリーやバイオレンスシーンの多い映画を寝る前に観ないようにするといったことも意識しています。ネガティブな気持ちが残ったまま寝ると、経験上、心身の疲れがとれにくいと思います。

Q3

心地よい眠りのための環境づくりで工夫をしていることを教えてください。

選手時代は、試合や合宿でいろいろな場所に行くので、どんな環境でも寝られることを強みにしていました(笑)。マラソンって、天候やレース展開など不確定要素が特に多い競技なので、その時々の状況に順応して、自分の力に変えていくことが求められるんです。だから、日常生活においても「ほしいものがない!」と慌てるのではなく、そこにあるもので工夫することが大事。寝具についても、例えばベッドがフカフカで寝づらいときは、布団を借りて床に敷いたり、マットレスだけで寝たりしていましたね。
競技前日などに緊張で寝つけないときは、「寝られない、どうしよう…」と焦るのではなく、「まあいいや」と気楽に考えて、とにかく横になって体と心を休ませる。これは、恩師である小出監督の、「体と心がリラックスできていれば、心配することはないよ」という教えなんです。

Q4

朝、心地よく目覚めるための習慣を教えてください。

指先から体を目覚めさせるようにしています。毎朝、起き上がる前に、手の指と指を1本ずつ合わせて、力を入れたり抜いたりを繰り返します。手と足の指先を触ったり揉んだりすることで体の末端が目覚め始めたら、次は耳。耳を揉むと、体が温まってくる感じがするんです。これをだいたい15分くらいかけてやっています。
ベッドから出たら、カーテンを開けて朝の陽ざしを浴びて、窓も開けて新鮮な空気に入れ替え。これが私の朝のルーティーンなのですが、スッキリと目覚められますよ。

手の指と指を合わせて力を入れたり、抜いたりを繰り返して指先を目覚めさせてから、耳を揉むのが有森さんのモーニングルーティーン。

Q5

最後に、睡眠の質を高めたいと思っている方々にメッセージをお願いします。

睡眠は、心身の健康や、毎日をイキイキと過ごすうえで欠かせないものだと思います。睡眠の質を少し意識してみることが、健康づくりの第一歩になるのではないでしょうか。また、睡眠だけでなく、栄養バランスや適度な運動も大切にして、健康習慣をつくっていきましょう!

専門家によるアドバイス

世界でもトップレベルのアスリートたちは、睡眠が自分のパフォーマンスにいかに大切かということを、よく把握しています。結果次第で人生が大きく変わることを強く実感しているからです。 有森さんは、睡眠の正しい知識をもち自ら実践されておられるのでアスリートの模範になると思います。これからもランナー・指導者としてますます活躍していただきたいです。

入眠直後に質の良い深い睡眠が十分にとれると、成長ホルモンが多量に分泌されます。成長ホルモンは、子どもの成長を促し、大人では傷んだ細胞を修復しアンチエイジングをもたらします。
つまり、質の良い睡眠は、ホルモン分泌をはじめ、アスリートにとっての最高のパフォーマンスを維持するための最も重要な要素で、スタンフォード大学のバスケットボール部での睡眠の実験がそれを示しています。

スタンフォード大学のバスケットボールチーム男子代表チームの11人の健康な学生(平均年齢19.4±1.4歳)を対象に、運動能力のうち特定の測定値、ならびに反応時間、気分、および日中の眠気に対する、数週間にわたる睡眠延長の影響を調査。被験者は、2〜4週間通常の睡眠覚醒スケジュールで生活した後、5〜7週間の睡眠延長期間を設け習慣的な睡眠覚醒スケジュールを維持。被験者は、睡眠延長中に可能な限り多くの夜間の睡眠(最低目標は毎晩ベッドで10時間)を続け、時限スプリントやシュートの精度などを練習の後に測定。睡眠延長中は、スプリント能力、フリースロー成功率、スリーポイントシュート成功率が向上したほか、被験者からは、練習やゲーム中の心身の健康状態の改善などが報告された。
出典:スタンフォード睡眠障害クリニックおよび研究所


有森さんの睡眠習慣のポイントは、「最高のパフォーマンス」「睡眠の質を意識」など、質の良い睡眠とパフォーマンスの関係をよく理解されていること、「スマートフォン」「リラックス」「朝の陽ざし」「新鮮な空気」など、質の良い睡眠をご自身で実践するためにできる工夫をされている点です。良い睡眠、そのための眠る前の準備と、起床時のリフレッシュ、日中の最高のパフォーマンスという、睡眠中と覚醒時のコントラストがさらに良い循環になっていると思います。

「健康づくりのための睡眠指針」のご紹介

厚生労働省では、科学的な知見に基づく「睡眠12箇条」を盛り込んだ
「健康づくりのための睡眠指針2014」を策定しています。
睡眠に関する正しい知識が身につき、
睡眠環境の見直しにも役立つ内容です。ぜひご活用ください。

健康づくりのための睡眠指針2014 (平成26年3月)