健康寿命をのばそう SMART LIFE PROJECT

自分の足で一生歩ける体に毎日かんたん!「ロコモ予防」

監修/大江隆史
NTT東日本関東病院 院長
ロコモ チャレンジ!推進協議会 委員長
NTT東日本関東病院 院長。
日本整形外科学会 整形外科専門医。
日本手外科学会 手外科専門医 手外科指導医。
大江隆史先生

ロコモ=
ロコモティブシンドローム

いつまでも自分の足で歩けて、健康的に暮らしていきたいですね。生涯、自由に歩き続けるためにも、最近「ロコモ」という言葉が注目されています。ロコモとは、「ロコモティブシンドローム」の略で、英語で移動を表す「ロコモーション(locomotion)」、移動能力があることを意味する「ロコモティブ(locomotive)」からつくられた言葉で、歩くことなど移動する能力が衰えた状態を指します。「ロコモ」を正しく知って、ずっと元気に歩ける人生を目指しましょう。

part1

知っておきたいロコモの基本

ロコモって何?
ロコモを放っておくとどうなるの?
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「ロコモ」とは運動器に障害が出て
移動機能が低下した状態

「立つ」「歩く」「作業する」など、私たちが自由に体を動かすことができるのは「運動器」のおかげです。運動器とは、骨や筋肉、関節のほか、脊髄(せきずい)や神経などが連携し、体をスムーズに動かす仕組みのこと。運動器のどこか1つでも障害が起こると、体の移動機能、つまり「体をうまく動かすこと」ができなくなってしまいます。それがロコモの状態です。
ロコモとは
体を支えて動かす
「運動器」の障害 により
立つ・歩くといった機能が低下した状態

「ロコモ」が進行すると、
将来寝たきりのリスクも!

ロコモが進行すると、運動器の障害により、バランス機能が低下します。すると、転倒による骨折のリスクも高まります。骨折すると、日常生活での行動が制限され、全身の筋肉量は低下。骨折が完治しても、ロコモの影響で満足に動くことは難しくなります。日々の活動量が減少していき、体力・筋力は次第に衰え、結果的に介護が必要な状態になったり、寝たきりになったりすることがあります。2022年の国民生活基礎調査の概況によると、要支援・要介護の原因で、ロコモとの関連性があると思われる「骨折・転倒」(13.9%)は認知症(16.6%)、脳血管疾患(16.1%)に次ぐ第3位でした。要支援・要介護状態を防ぐためにも、ロコモ対策は必要不可欠です。
運動器の障害
転倒による骨折のリスクが高まる
筋肉量の減少
要支援・要介護寝たきりにつながる

「ロコモ」の要因はふだんの生活に大きく関係

ロコモになる要因は加齢による筋力低下のほか、ふだんの生活習慣や体型も大きく関係しています。では、順に見ていきましょう。.9%)は認知症(16.6%)、脳血管疾患(16.1%)に次ぐ第3位でした。要支援・要介護状態を防ぐためにも、ロコモ対策は必要不可欠です。
腰痛 や ひざの痛みも感じやすい

1運動習慣のない生活

運動習慣とは、国民栄養調査では「週2回以上、1回30分以上、1年以上、運動をしている 」と定義されています。運動習慣がないと、筋力は低下していきます。ただ、無理をすることなく、自分のできる範囲で運動習慣を身につけていきましょう。運動は散歩やジョギングなど軽いものでかまいません。また、エスカレーターやエレベーターを使用する頻度を下げたり、仕事や買い物で自動車などの乗り物を多く利用している人は、時間があるときは意識的に歩いたりすることも大切です。

2やせすぎと太りすぎ

やせすぎの人は食事量が少なく、栄養が不足して骨や筋肉などが衰えやすくなります。一方、太りすぎの人は体重が重い分、膝や腰などの運動器に大きな負担がかかり、膝痛や腰痛の原因にもなりかねません。やせすぎでも太りすぎでもロコモの原因となり、さらには骨粗鬆症(こつそしょうしょう)や変形性膝関節症、脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)など、ロコモを進行させる病気につながることもあります。

part2

あなたの「ロコモ度」チェック!

ロコモかどうかチェックする2つの方法をご紹介。
室内で簡単にできるので、ぜひ試してみましょう。
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【ロコモ度チェック1】
下半身の筋力を測る「立ち上がりテスト」

立ち上がりテストは、自分の「ロコモ度」を判定するテストの1つです。座った姿勢から片足、または両足で立ち上がれるかによってチェックします。
立ち上がりテスト
立ち上がりテスト
両足の場合 両足の場合
片足の場合 片足の場合
40センチの高さから立ち上がれないと、
ロコモが始まっている
立ち上がりテストは、両足もしくは片足で立ち上がれる台(椅子)の高さから、下半身の筋力、特に膝を伸ばす筋力を測定する方法です。40センチの高さからどちらか一方の片足で立ち上がれない場合、移動機能の低下が始まっています。40センチの高さから両足でも立ち上がれない場合は、移動機能の低下が進行している状態です。

【ロコモ度チェック2】
歩行能力を測る「2ステップテスト」

2ステップテストは、歩幅から「ロコモ度」を測定。歩くために欠かせない「下半身の筋力」「バランス能力」「柔軟性」など、歩行能力を総合的にチェックすることができます。
ロコモ度チェック2 最大2歩幅
1
スタートラインを決め、両足のつま先を合わせます。
2
できる限り大股で2歩歩き、両足を揃えます。(バランスを崩した場合は失敗とし、やり直します。)
3
2歩分の歩幅(最初に立ったラインから、着地点のつま先まで)を測ります。
4
2回行って、良かったほうの記録を採用します。
5
次の計算式で2ステップ値を算出します。
2歩幅(cm)÷ 身長(cm)=2ステップ値
2ステップ値が1.3未満なら
ロコモが始まっている

2ステップ値が

1.1以上1.3未満の場合

ロコモ度1
ロコモが始まっている状態。
筋肉や骨の維持・強化が必要。
少しずつ運動を習慣化。
タンパク質やカルシウムの摂取。

2ステップ値が

0.9以上1.1未満の場合

ロコモ度2
ロコモが進行している状態。
このままだと自立した生活ができなくなる可能性。
痛みがある場合は、整形外科専門医の診療を。

2ステップ値が

0.9未満の場合

ロコモ度3
ロコモが進行し、社会参加に支障をきたしている状態。
自立した生活ができなくなるリスクが非常に高い。
整形外科専門医の診療を。
2ステップ値は、一般的に加齢とともに低下していきます。平均すると、男女ともおよそ80歳を境にして、ロコモの可能性がある1.3未満になります。下記の男女年代別平均値を参考にして、2ステップ値が1.3未満にならないよう、頑張りましょう。
男女年代別・2ステップ値平均値
男性 女性
20~29歳 1.64~1.73 1.56~1.68
30~39歳 1.61~1.68 1.51~1.58
40~49歳 1.54~1.62 1.49~1.57
50~59歳 1.56~1.61 1.48~1.55
60~69歳 1.53~1.58 1.45~1.52
70歳以上 1.42~1.52 1.36~1.48

※ロコモ チャレンジ!推進協議会ロコモ度テストワーキンググループ調査資料

part3

ロコモを防ぐ「ロコトレ」

ロコモにならないための簡単な運動や対策をご紹介。
毎日、できる範囲で続けることが大切です。
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【ロコトレ】
下半身の筋力をつける「スクワット」

ロコモを予防するには、下半身の大きな筋肉を鍛えることが大切です。下半身の筋力をつけるロコトレとして、スクワットがとても有効です。ゆっくりとやってみましょう。
スクワットの仕方
Point
  • ・動作中は息を止めないようにします。
  • ・膝の曲がりは90度を大きく超えないようにします。
  • ・楽にできる人は回数やセット数を増やして行ってもかまいません。
  • ・支えが必要な人は十分注意して、机に手をついて行います。

5~6回で1セット、1日3セット

スクワットができない場合

イスに腰掛け、机に手をついて立ち座りの動作を繰り返します。机に手をつかずにできる場合はかざして行います。

スクワットができない場合

【ロコトレプラス】
バランス能力や柔軟性を高める
「踏み出し運動」

スクワットの次は、バランス能力や柔軟性を高める、ロコトレにプラスする運動をご紹介します。下半身の筋力だけでなく、歩行能力を総合的に向上させる効果があります。
踏み出し運動 踏み出し運動 踏み出し運動
Point
  • ・上体は胸を張って、良い姿勢を維持します。
  • ・大きく踏み出しすぎて、バランスを崩さないように気をつけます。

5~10回で1セット、1日2~3セット

【ロコモを防ぐ食事】
タンパク質やカルシウムを多く含む食材を意識的に摂ることが大切

ロコモの予防、改善にはバランスの良い毎日の食事が重要です。骨や筋肉に役立つ食材を積極的に摂っていきましょう。
きちんと食べて
ロコモに負けない身体づくりを!
私たちの身体は食べ物(栄養素)からできています。食べ物は筋肉や骨をつくるための貴重な材料です。ロコモ対策で運動を始めても、材料が不足していれば、筋肉は消費されるだけで増えることはありません。特に骨の材料となるタンパク質、カルシウムは意識的に摂取したいものです。タンパク質は筋肉の材料にもなります。また、カルシウムの吸収を高めるビタミンDの摂取も忘れてはいけません。ビタミンDは魚類やきのこ類に多く含まれています。丈夫な筋肉や骨をつくるためにも、毎日、栄養バランスの取れた食生活を心がけ、特にタンパク質とカルシウムの不足に気をつけましょう。