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調理師集団がおいしさを追求した
スマートミール弁当

株式会社西原屋 日本橋店(東京都)

スマートミール認証を取得した事業者の取組を紹介する「スマートミール探訪」。今回は、企業の事業所向けの日替わり弁当でスマートミール認証を取得した、西原屋 日本橋店(東京都江東区)です。
調理師のプライドとこだわりが詰まったスマートミール弁当とは。

写真左:伊澤誠太郎さん(株式会社西原屋 専務取締役)
写真右:渡部 翔さん(株式会社西原屋 食堂グループ 日本橋店 管理部 課長)
株式会社西原屋 日本橋店でスマートミールをはじめとするヘルシーメニューの取組を推進。伊澤さんは経営、渡部氏は管理や広報などの業務に携わりますが、調理師としての豊富な調理経験も持っています。
最初に、西原屋の成り立ちと、現在の事業について教えてください。
伊澤さん:創業は、江戸時代の慶応2(1866)年。創業者が、当時江戸で流行っていた握り寿司を、故郷である館山(千葉県)の人たちに食べさせたいと寿司屋を開いたのが始まりです。房州寿司(シャリもネタも大ぶりな寿司)の元祖の店の一つとされています。
そして、今から60年ほど前、家族みんなで食事を楽しんでほしいと考えた5代目が、中華や洋食も提供する総合食堂を始め、西原屋という会社を設立しました。「店はお客様のためにある」という理念を代々受け継ぎながら、現在は、企業や学校、介護施設などの食堂運営、レストランの運営、弁当の配食が主な事業となっています。
ちなみに、先代の社長は日本調理師会と調理師免許制度の創設に尽力しました。そのため、当社では主任以上の役職になる条件として、調理師免許の取得を必須にしています。日本橋店だけでも10人近くが調理師免許を持っていますし、私や渡部も持っています。
食に関する事業を幅広く展開しているのですね。この中で、企業の事業所にお弁当を配達している西原屋 日本橋店がスマートミール認証を取得しました。きっかけはなんだったのでしょうか。
伊澤さん:スマートミール認証を取得したのは2019年ですが、ヘルシー弁当にはそれ以前から取り組んでいました。
お弁当には、もともとAランチとBランチの2種類があって、BランチはAランチよりも1品多くて100円高い「ボリューム重視」という設定でした。Bランチは、多い時で一日約800食の注文があったのですが、だんだんと減っていき、2014年ごろには一日100食前後(日本橋店で作っているお弁当全体の2~3%)に落ち込んだのです。原因を探るためにお客様の意見を聞いてみたところ、「ボリュームが多すぎて食べ切れない」といった声が多いことが分かりました。また、他社のお弁当には、ごはんの「小盛」があることも分かりました。そこで試しに「小盛」を始めてみたら、注文の30%くらいが小盛になったのです。
これに手ごたえを感じたことが、本格的にヘルシーメニューに取り組むきっかけになりました。しかし、ボリューム重視でやってきたBランチを、真逆のヘルシー路線に変更することに対して、社内からは異論が噴出しました。先ほど申し上げた通り、当社には調理師がたくさんいて、皆、基本的には「おいしいものを、お腹いっぱい食べていただきたい」と考えます。カロリーや栄養という観点で料理を作ったことはほとんどありませんし、「ヘルシー」をうたっている他社のお弁当を食べても、「同じものを自分たちが作ることはあり得ない」といった反応でした。味も、見栄えも良くない、原価も安そうな食材を使っている、でもヘルシーならば許される。正直なところ、そういう印象を持ったのです。それに対する反発心から、栄養のことを考えながら、「良い食材を使う」「お腹いっぱい食べていただく」、そして、「おいしい」という3つのコンセプトでスタートしました。
ヘルシーメニューの開発で苦労したことはなんでしょうか。
伊澤さん:一番はカロリーです。まず、基準となるカロリーを決めるにあたって、当時はスマートミールの制度がなかったので、厚生労働省の「健康な食事(※)」を参考にしました。お弁当全体のカロリーをごはんの普通盛で650Kcal以下、小盛で540Kcal以下としたのですが、ごはんだけでも普通盛が約360Kcal、小盛が約302Kcalもあるので、相当高いハードルでした。それでも、社内の管理栄養士と一緒にメニューを作っていく中で、「フライよりもてんぷらにしたほうがカロリーが下がるのか」「唐揚げはかなりカロリーが高いから気を付けよう」というように、コツがつかめるようになりました。
あとは食材と原価のバランスです。ヘルシーメニューに限ったことではないのですが、食材に対するこだわりが強いんです。銀鮭や紅鮭、銀鱈、「ノンメタポーク(千葉大学を中心に産学連携で開発した“メタボではない豚からできた肉”)」など、500円のお弁当としては原価的に使いにくい食材、しかも品質の良いものを使ってます。仕入れ値を少しでも抑えるために、魚の切り身加工は自社で行うなどの工夫をしています。

※「日本人の長寿を支える『健康な食事』のあり方に関する検討会 報告書」(厚生労働省)
ヘルシーメニューに変更してからのBランチに対するお客さまからの反応はどうだったのでしょうか。
伊澤さん:非常に好評で、注文数は一日400~500食に回復しました。ヘルシー路線への変更は成功だったと思います。ただ一方で、「ヘルシーの基準はなに?」という質問を受けることがありました。カロリーや栄養バランスについて明確な基準を示す必要性を感じていましたし、だれかが決めてくれたらいいのにという思いもありました。
それでいろいろと調べているうちに見つけたのが、スマートミール認証でした。スマートミール認証は、明確な基準を設けて「健康づくりに役立つ栄養バランスのとれた食事」を定義しているので、直観的に「これだ」と思いました。ヘルシーメニューに変更してからのBランチ(ごはん小盛)は、すでに認証基準よりもカロリーを抑えていたので、カロリーを足せばクリアできることも魅力でした。
ある日のBランチ(ごはん小盛)。主菜は、ノンメタポーク生姜炒め&メカジキ西京焼きの2品。副菜は、シーフードサラダ、ひじき煮など。このお弁当の場合、すべてのおかずを合計したカロリーは290Kcalで、ごはん小盛を合わせると約592Kcal。
そして2019年に認証を取得すると、スマートミールだからと新規のお客様も増え、コロナ禍前は一日700食(全体の約20%)前後まで伸びました。一日あたりで一番多かったのは880食で、毎年秋にやっている生サンマを使ったお弁当です。
Bランチをご注文いただいているお客さまからは、「カロリーや食塩量などを気にすることなく食べられるのはうれしい」「体調が良くなった気がする」等のお話をよく聞きます。福利厚生の一環として、スマートミールのみ昼食代を補助する制度を設けている会社さんもあるようです。「ヘルシーの基準」についてご質問を受けることは減り、我々が詳しく説明しなくても、「スマートミールの認証基準を満たしています」とお伝えするだけで、納得していただけます。
あと、残飯が減りました。以前は、「カロリーが気になるから…」と、フライやてんぷらの衣をはがして召し上がる方が少なくありませんでした。でも、スマートミールはすべて召し上がっていただく前提でカロリーや栄養バランスなどを計算しているので、我々も「安心して、すべてお召し上がりください」と自信を持って言うことができます。
コロナ禍の影響でお弁当全体の注文数は減っていますが、Bランチはほかのお弁当と比べて減り幅が小さいです。それだけスマートミールとしての価値を認めていただいているのではないでしょうか。
日替わり弁当は、土日を除く週5日販売。「毎日、違う味を楽しんでいただきたいので、常に新しい食材やメニューを研究しています」(伊澤さん)
家庭でもできる、カロリーを抑える工夫を教えてください。
渡部さん:肉や魚の下ごしらえとして、一度茹でて余分な脂肪分を落としておくと、カロリーを抑えることができます。例えば、炒め物に肉を使う場合でも、事前に茹でておけば火の通りを心配する必要がなく、調理時間の短縮にもつながるのでおすすめです。
「肉や魚を茹でてから使う」という方法は、西原屋ではずっと前からやっていることで、おそらく、大量調理をする事業者にとっては珍しいことではないと思います。これは主に、食中毒などを防止する食品衛生の観点から行っているのですが、それがカロリーを抑える工夫にもなっていたことは新たな発見でした。
最後に、今後の展望についてお聞かせください。
伊澤さん:私たちにとって何よりうれしいのは、お客さまから「おいしかった」と、栄養バランスに加えて、味付けや食材をほめていただくことです。「店はお客様のためにある」という理念のもと、これからもおいしくて、お腹いっぱいになって、しかも、健康に良い料理を提供するためにはどうすべきか。そのことを本質として追及していきたいと思います。
お弁当のメニューは日替わりなので、常に新しい食材や味付けを研究しています。それを続けていけば、数年後にはBランチのラインアップが変わっているかもしれません。何かを変えようと思って取り組むのではなく、調理師と管理栄養士がそれぞれの強みを掛け合わせていくことで、今後も変わらず、より良いものを生み出していけると信じています。